2024/05/22 00:42
ONLINE CATALOG (18 Sep updated)
《 Dance in HANGESHO 》
半夏生のリズム
月にすむ永遠の生命の持ち主と、地球の人々が出会う高畑勲監督の「かぐや姫の物語」には、生命観についてのヒントがあります。かぐや姫は、天女が感慨深げに地球のわらべ歌をうたう様子をみて、地球へ降りたつ事を決意しました。地球で生まれ変わったかぐや姫は、自然とたわむれながら「鳥 虫 けもの 草 木 花 春 夏 秋 冬 連れてこい」と少年達とくちずさみ、涙を流してしまいます。理想やプライドに振り回され本来の生きる力を抑えられるなか、月で永遠の命をもつかぐや姫の無意識は、移りかわる自然と生命の輝きに感動していたのです。
いま世の中が「人間中心」から「地球の生命」へと意識を変え始めるなか、社会生物学者の福岡伸一氏は、生命の循環を維持するバランスを動的平衡と言い、「地球と人が粒子レベルで常にバランスをとりながら循環し続けている事」と説明しました。動的平衡を意識的に取りいれる事は、地球、国、会社、コミュニティーや家族、身体など、それぞれのスケールで良いバランスをうみ、生きる力の流れをつかむ1つの方法と考えられます。そしてSUCHSIZEの活動においても、このバランスを様々な芸術表現をとおして模索したいと思います。
初回の本展のテーマは、「気の表現からみた山水画」です。山水画とは、「気」の満ちた山水を描くことで、森羅万象のエネルギーを取りいれようと試みた芸術表現です。それは自然の流れを暮らしの中に取りいれる「動的平衡」の1つとして見る事ができ、自然と身体をつなぐ気の流れを整えているのかもしれません。
出品作家の黒瀬正剛が探求する線描もまた、気をためているような背景の色層から、文字・記号・絵画が成立する手前にある動的エネルギーをとらえているようにも見えます。そして太陽の運行と人の関係を追う松田壯統は、太陽の光が射した喜びの瞬間や意識を、紙に定着させるデイリーワークを試みています。またYukawa-Nakayasuの結晶ペインティングは、有機物の結晶化現象で描くという自然現象と人為的行為のまじわりから、光の輝きと気象を画中にたちあげます。
このように本展では、私たちにふりそそぐ自然のエネルギーを可視化し、言葉では言い尽くせない生きる力・生命の輝きを、暮らしに取りいれていけるのではないかと考えます。この興味深い問いに対して、まずは本展を交流の場としてオープンする事から始めたいと思います。
✅開催概要
会期:2024年7月5日(金)〜8月31日(土)のうちの月・金・土曜(計21日間)
*ART OSAKAにあわせて、7/21日(日) は、臨時オープンします
時間:13:00〜18:00
会場:SUCHSIZE (大阪市西成区山王町1-6-20)
料金:入場無料 ※予約不要
主催:SUCHSIZE
出展作家:黒瀬正剛、松田壯統、Yukawa-Nakayasu
✅イベント情報
ワークショップ「みる なぞる」
講師:黒瀬 正剛
日時:2024年8月3日(土) 13:00 - 15:00
会場:SUCHSIZEとその周辺 対象:子供から大人まで (お子さまは保護者同伴)
料金:¥2,500 (画材代含、冊子付)
定員:5名 先着順
予約方法:masataka.kurose@gmail.com、またはInstagramのMasataka.KuroseのDMにて受付いたします。メールに『代表者氏名・人数・電話番号』を明記の上ご連絡ください。
✅アーティスト情報
黒瀬 正剛 | Masataka Kurose
美術家。1978年大阪生まれ。奈良県生駒市在住。1999年、成安造形短期大学 造形芸術学科 イラストレーションクラス卒業。 色彩を帯びた、筆墨に由来する多様な線を用いて、この世界を、文字・記号・絵画などによって文節化される以前のエネルギーの総体としてとらえるべく、制作を続ける。2022年、初となる作品集「Dots - Lines」を刊行。
松田壯統 | Masanori Matsuda
1982年兵庫県生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。 2017-18 ポーラ美術振興財団在外研修員としてアイルランド、2019-21文化庁新進芸術家海外派遣制度研修員としてポーランドに滞在。 自然と人の連動性をフィールドリサーチから空間に展開し、 自然、社会、生活における生命力の流れの良さを表現する。 2018年に「死と再生」をテーマとした展覧会 (アイルランド・スイス・中国)、2019年に国際ビエンナーレなど(ポーランド・ドイツ)を経て、近年はポーラミュージアムアネックス展2022などに参加している。
Yukawa-Nakayasu | ユカワナカヤス
「歴史や習俗や習慣に内在する人々の営み」を現代へと再解釈 / 再文脈化する事をとおして、現在起きている言語化できない現象や問題を視覚化する作品を制作。
特に、近年では「自然の循環」まで視野を広げ、人々の営みと自然の循環との相互関係に着目している。また 2019 年からアートハブTRA-TRAVELを立ち上げ、2020年「ポストLCC時代の 」(京都芸術センター)などの展覧会をプロデュースする。http://yukawanakayasu.net/